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ハイレゾ音響空間 KooNe[クーネ] Official Web Site

Victor Entertainment

特集 自然環境をそのままそっくり再現する、そのノウハウとは?
リアルな音を追求するKooNeのハイレゾ・サウンドを大解剖!

Interviewee:

岩田 哲郎 氏

ビクターエンタテインメント
エンタテインメント・ラボ
サウンド・プロデューサー 岩田 哲郎 氏

高須 寛光 氏

ビクタースタジオ
レコーディング・エンジニア 高須 寛光 氏

― KooNeの一番の特徴は、ハイレゾ自然音の提供ですが、どのようにKooNeのハイレゾ自然音が生まれ、いつごろから収録がスタートしたのでしょうか?

岩田最初にハイレゾリューション(以下、ハイレゾ)・スペックを活かせる音作りはどんなものがあるかと模索している時期がいまから7-8年前にありました。当時アーティストもの(音楽もの)に全体の方向性が向いている中、ハイレゾ・クオリティに合う対象として、“自然音”が上手く呼応するのでは?これを利用したサービスを組み立てられないか?という構想が生まれてきていました。自分が携わった高野山の「声明」をCD化する企画で、収録チームに高野山の森の音を収録してきてもらうよう依頼しました。そこでハイレゾの自然音がどういう音になるのかを知り、この流れがKooNe-ハイレゾ音源活用の事業構想の原点です。

― ハイレゾ自然音の収録で使用される 機材などについて教えてください。

高須収録で活用しているマイクは三研というメーカーのCO‐100Kという高性能マイクです。一般的な音楽のレコーディング用に使用されるマイクは周波数特性が20kHz(キロヘルツ)までのものが多いのですが、このCO‐100Kは100kHzまでの周波数を拾えるといわれています。 このマイクにつなぐフィールドレコーダー(持ち運び可能の録音機器)は、収録地の環境状況に合わせて、TASCAM製とZOOM製の2種類を使い分けて使用しています。大きな違いは、フィールドレコーダーの大きさでZOOM製の方がコンパクトなので、険しく地形の複雑なところで利用することが多いです。

このCO‐100Kが発売された当初2010年~2011年の頃だったと記憶していますが、その頃初めて利用しました。当時、一般的な音楽レコーディングで活用していたB&K製のクリアでフラットな音を収録できる特性を持つ測定マイクを基準に、CO‐100Kと比べて録音をしていました。結果はCO‐100K で録音した音の方が、場の空気感や臨場感といったダイナミックさ感じられ、自然音をハイレゾ・クオリティで収録することに適応していると判断し、現在も利用しています。 余談ですが、この日本製のCO‐100Kは少しずつですがクラシックやJAZZなど生音の臨場感や空気感を重視するレコーディングに海外も含め利用されています。

― ハイレゾ音源の収録地はどのように選ばれているのですか?

岩田ブランド力の高い、みなさんが耳にしたことのあるような土地を優先して選んで収録してきています。 世界遺産に認定された場所などで音を収録することで、その自然音に付加価値をつけたいというのも狙いの一つです。 KooNeが2013年に事業化してから、これまでに屋久島、戸隠、白神山地、日光、沖縄など各地20か所以上の森・川・海などの収録地に出向いています。

とにかく、適格な“収録場所”を探し出すことが、ハイレゾ自然音を収録する時の一番の重要ポイントで、それが全てといっても過言ではないです。 だいたい1回の収録期間は1週間前後で、2人ほどで行っていますが、最初の収録場所探し(ロケハン)で2~3日はかかります。重要ポイントではありますが、自然相手なのと期間が限られているので100%納得できる場所(時)もあれば、多少妥協せざるを得ない時もあります。

― 森、川、波の音を録るときの、それぞれ収録のポイントを教えてくさだい。

【森について】

高須先ほど述べた三研製のCO‐100Kのマイク2本で、ステレオという概念に沿って人間の耳で聞こえる音を録るというのを基本としています。

岩田家庭用のコンポやヘッドフォンなどで聞く音を録るわけではなく、空間に流れる、空間の中で再現できる音の録り方に注視して、かなりステレオ感を広くとっています。
このCO‐100Kは本来室内用のマイクで弦やピアノの生音を録るマイクです。ある意味、森の中の自然音を一つの演奏と捉えて、ハイレゾのクオリティを引き出すために、こういった高性能のハイレゾ収録マイクをあえて野外で利用しています。

高須森の中は、壁など特定するものがないので森全体を大きな空間と捉えています。
人間の耳は非常に性能が良く、ノイズなどがあっても補正してそれを聞かないように、聞きたい音を優先的に拾うようにできています。そのため、森の中のリアルな自然音というのは、本来森の中に存在する耳ざわりなノイズを人間が自分自身で無意識にカット(補正)した心地良いと思う音が、「その森の中のリアルな音」となります。

僕自身が収録地に立って、いま聞いているそのリアルな自然音を、そのまま収録するのはかなりの至難の業です。 例えば、自分の“耳”がある場所に同じような方向でマイクを設置したとしても、マイクの性能が良すぎて2つ向こうの山に走る車のエンジン音を拾ってしまうこともあります。先ほど述べたように僕の耳は無意識にノイズをカットしているので、車のエンジン音など聞こえません。こういう場合、マイクの配置や距離を変えるなど試行錯誤して収録マイクの配置場を決定します。それでもダメな場合は、収録地を再度探すことになり、その繰り返し作業になります。

岩田さらに言えば、森の自然音ということで鳥の囀りを狙って録ると逆にうるさかったりすることもあり、森の全体の雰囲気感を損なう音になってしまいます。またマイクに関しては位相にも気にしてセッティングしています。こういった経験を積み重ねて技術をにつけ、収録作業全体を改善し続けています。

高須地面近くにマイク設置して録った音は、低音が溜まった感じが気になり心地よいけど淀みを感じることがあります。そういう時は、木に登ってマイクを取り付け、音を収録することもあります。その方がすっきりした音を録れるからです。形状的には、すり鉢状になっている場所は響きがいい傾向にあります。斜面(山肌)がマイクに近いと土の種類によっては音が広がらなかったり、反対に斜面から離れると音が広がりすぎるということになり、バランスの調整が毎回チャレンジングです。

【川・波について】

岩田川についてもロケハンが重要で、川といって思い浮かぶイメージで録りに行くと、音が強すぎて圧迫感のある音になったりします。水量や川の流れの強さが「川の音」に感じる心地よさに直接結びつくので、場所探しは本当に難しいです。 波も同様で、川以上に少しでも音が強いと圧迫感、恐怖感がでるので、場所探しが非常に大事です。海辺は人が活動していることも多く、お互い気遣いながら収録場所を確保しているような感じです。

高須例えば5m離れると水しぶきや波の立ち方が違います。動きのあるもの(=水)については、それぞれの動きにフォーカスして場所場所で音を録っています。音の動きをポイントごとに捉えて臨場感と広がりを創りだします。

岩田水しぶきが返り飛んでくるので、収録時間は長くても1時間くらいで、マイクを休ませ乾かせ、また収録するというのを繰り返し作業しています。 冬は寒波で氷点下になったことがあり、マイクが正常に作動しないというトラブルが発生したこともあります。こういう季節とセンシティブな機器類との取扱いは今後の課題でもあります。

【全体として】

岩田場所が決まってから、収録作業までの時間が限られていることもあり、収録地に出向く前に都内の公園などでマイクの配置をシュミレーションしたりして事前準備をして臨むことも多いです。 そうすることで、現地で自分たちが求めるリアルな自然音の収録作業を効率的に行え且つ納得のいく音を録ることができます。

高須自分が世界遺産の音を録るという実作業を行っている中で、本当に森など自然の場所に存在する音の気持ちよさを体感しました。その感じた“気持ちいい”をリアルな音として残したいというぶれない軸があり、その思いをもってレコーディングに臨んでいます。収録現場で、「ここでこういう風に録ったら、こんな風な臨場感のある音が録れるんじゃないか?」という感覚が岩田さんと合致した時は、必ず最高の自然音が録れます。

― これまで行かれた収録地でレコーディングしている時の面白いエピソードがあれば教えてください。

高須個人的に面白いのは、いろいろな野生動物に出会えることですね。ロケハンしている時に野生の鹿や猿など遭遇するのは楽しいです。秩父の奥地で4輪駆動車くらいの大型の野生の鹿が目の前に出てきたときには、もののけだったのではと思うほどびっくりしたことがあります。

岩田野生動物といえば、秋頃にイノシシに追いかけられたことがあります。さすがにこのときは機材を置いて逃げました(笑)。威嚇程度でしたが10mくらい突進しては少し止まったりという感じで。全力で追いかけられなくて本当に良かったです。

高須四万十の収録では気候の違いでハプニングがありましたよね。春頃で、東京は比較的暖かく軽装だったので、その状況で収録地に向かいましたが、四万十の高原は非常に寒く5度以下の真冬並みでした。さすがに10分ともたず、二人で街にもどって冬服を買うはめになったこともあります(笑)。

岩田四季ごとにそれぞれ苦労があるわけですが、夏が一番大変で、森の中でハチやアブ、セミなどが多かったりします。 収録音としても不快感を与える羽の音が取れてしまうのでかなり困ったなぁと思うこともありました。自然との共存はホントに戦いです(笑)。
あと、夜の森は正直何度行っても怖いです(笑)。本当に暗闇に包まれているからか、恐怖感を覚えます。鹿など動物の鳴き声も良く聞こえるのですが、ある時、何か聞いたことない鳴き声を耳にして、後からそれが熊だと分かった時はぞっとしましたね(笑)。

― 収録されたハイレゾ自然音をKooNe用にスタジオでトリートメント(編集)をされますが、この工程について教えてください。

高須収録している段階でもできるだけリアルな音に近づけて音を録っていますが、さらに心地良い音にするために補正EQを行っています。 EQとは、各周波数帯域の帯域のボリュームを調整する作業です。一般的なコンポであればトレブル、ミッド、ベースなどの調整ができるかと思いますが、それをもっと細かくシビアに周波数帯を調整する作業になります。

岩田鳥の鳴き方や声の量、種類、大きさなどのバランスを考えながら、心地よい音に整えていくわけですね。

高須森の音には低いボーっといった音やサーっといた音が録れていますが、これが鳥の鳴き声をマスキングしてしまっていることがあります。 先ほどもお話しましたが、実際森で自分が聞いている森の音は、このボーだったりサーだったりという音は無意識に耳で補正しているので聞こえてなく、鳥の囀りが心地よく聞こえていた状態でした。これが人間の耳に残るリアルな森の音なわけです。なので、この状態に整えていく感じです。

岩田KooNeとして居心地の良さのバランスを整えているので、どこで録っても入ってしまういろんなノイズ(カラスの鳴き声だったり飛行機の音だったり)をカットする作業もしています。作業中はずっとハイレゾ音で森の自然音が流れている状態なので、リラックスして作業に取り組めるのはいいのですが、気持ち良すぎてたまに寝てしまいそうになりますね(笑)。

高須最終的にKooNeのハイレゾ音は、すべて、意識して聞こうとしない音、音がそこにあっても疲れない音というのを目指したバランス加減を一番良い状態として音作りをしていますね。

― KooNeには自然音のほかにアンビエント音源もあります。どんな音づくりを心掛けて収録されたか、またトリートメントされたかお聞かせください。

高須ギターの生音のアンビエント音源を録音しました。 これも、人間の耳でとらえるギター音、つまり目の前で鳴っている音というのは、マイクで拾うと良くも悪くもまったく違う音になります。 目の前で聞いているより太く聞こえたり、逆に心地よかったり、マイクでひろった音がモコモコしてたりと、バランス差がでるので、自分としては、より気持ちいいギター音、心地よい音を目指してレコーディングとEQ作業をしています。

― サウンド・プロデューサーとして、KooNe導入をご希望されるお客様のスペースに対して行われている「空間音響デザイン」について教えてください。

岩田収録してきた音のアウトプットとなるスピーカーの配置をデザインする作業を「空間音響デザイン」と呼んでいるわけですが、とにかく、“収録してき音がそのまま再現される環境を作る”ことを常に意識しています。
 対象となる空間の広さや形、もっと言うと、壁や床の材質、什器の数や素材など、案件ごとに全て異なります。それにより空間の「響き」がそれぞれ異なるので、その空間に合わせたスピーカー配置を考える必要があるのです。

― KooNeがスペースに導入される最後の工程「音響チューニング」ついて どういったことをして、何かポイントとなり、どういう空間を目指していますか。

岩田基本的に収録した時の心地よい森の雰囲気、空気感をどこまで再現できるかというのがポイントです。 感性の領域なので絶対数値というものが示せないのですが、耳と感性と経験が非常に重要でこれが頼りになります。 耳と感性の良好状態を維持するため、音を大音量で聞かないよう意識していますね。チューニング作業が遠方で飛行機で移動する場合などは、気圧変化によって耳の感度が鈍くなるので、早めに到着し現場にいくまでに時間をおいて耳の状態を調整することを心掛けています。

以上、2017年7月31日 ビクタースタジオ にて